Nature 2009 May 掲載論文について

こんにちは、今日は、先々週のnatureに掲載された、自閉症児の知覚に関する研究について、簡単にご紹介したいと思います。

簡単に言うと、バイオロジカル・モーションの知覚に関する研究です。バイオロジカル・モーション(以下BM)というのは、生物の身体の動きを、その関節を光点で示すことによって表したものです。ヒトは、生後3ヶ月でBMと運動量が同じランダムな動きを区別し、4ヶ月でBMのほうを好むということが実験によって明らかにされています。ヒトは「ヒトらしい」社会的な情報に注目しやすい性質をもっているのでは、ということですね。

今回の研究では、自閉症児が2歳の段階で(海外では自閉症の診断は18ヶ月で下されます)、他群(定型発達、学習障害群)よりも、BMへの選好を示さないということが報告されています。しかし、この論文は、そこで終わるだけではなく、「刺激によっては、自閉症児もBMへ選好を示す」ということを発見しています。その刺激とは、分析すると、「音と動きの随伴性の高い刺激」でした。

このことは、既に2歳の段階で、「少し異なる世界の見方」をしているのでは、ということを実証的に示しています。自閉症に関しては、「~ができない」「~が苦手だ」という形で、断片的な特徴ばかりが挙げられてきました。しかし、本研究では、それらの断片的な特徴のもとなるベースなのではないか?という推論がなされていました。

身近な、支援方法の研究だけでなく、まだまだ議論は絶えないとは思いますが、このような基礎レベルの研究も盛んになってきています。これらの研究が、発達障害を持つお子さんたちに有意義な方向に向かってくれることを願うばかりです。

個人的には、「なぜ」そうなるのかが知りたいところです。(「遺伝子だ」と言われてしまうのかもしれませんが・・・科学は「WHY」にはなかなか答えてくれません)

支援方法だけでなく、こういった学術論文も紹介していきたいと思います。

コメント

新しい知見をご紹介いただきありがとうございます!
学術的な内容の投稿も大歓迎です。
彼らの持っている独特の世界観を知る手がかりになりそうですね。
全ての情報が同じ重みを持って飛び込んできたときにどのような感覚になるのか。
そして私たちはどのようにしてそれに対処しようとするのか。
もっともっと知りたいですね。

2009年5月30日 | シリウススタッフ

投稿とても勉強になりました。ありがとうございます。音と動きの随伴性の高い刺激(人)を好むという事実から、教師は動作を交えて声かけをした方がいいということになるのかなと思いました。どんな動作がいいのか、どんな声かけがいいのかというところまで、研究と実践との連携により明らかになるといいものですね。

2009年5月31日 | tanachann(教育)

コメントありがとうございます。
こういった知覚レベルの研究を、実践に生かすのはとても難しいことだと感じます。
まず、この実験は、実験室で行っています。
他の刺激が無い状態で、二択(BMかランダム)のどちらかの単純な刺激を見る、という状況の下での結果です。確かにベースの知覚では、上述したような刺激を好むことは明らかになったのですが、日常生活において、他の要因がさまざまに絡み合った刺激が溢れるなかでは、どのような選好を示すのかはケースバイケースです。
まだいえることは、例えば保育園でお遊戯をするときは、「大きな栗の木の下で」のように、音と動きがはっきりとシンクロしているものが、自閉症児の興味をひきやすい、ということくらいでしょうか・・・(でも小さい子向けのってどれもそうですよね)

なんだかお役に立てず申し訳ないです;

2009年5月31日 | ku(教)

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